様式と転成

Words without thoughts never to heaven go.

ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管:ベルリオーズ『幻想交響曲』@所沢ミューズアークホール

 

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photo by Gueorgui Tcherednitchenko

 

 秋になるとオーケストラを聴きたくなる。沢山の一流オーケストラが世界中から来日する中、はじめに撰んだのがゲルギエフとマリインスキーのコンビネーション。札幌と所沢で予定されていた「グリーグ:ホルベルグ組曲ブラームス交響曲第2番、ベルリオーズ幻想交響曲」というプログラムが最も魅力的に映った。それは、秋と云えども霜月の寒い風が吹き付けて来る日だった。駅を降り、しばらく歩いてホールへと向かった。

 

Symphonie Fantastique,

Symphonie Fantastique, "épisode de la vie d'un artiste" Op.14 : II Un bal

  

 帝都由来のハーモニー

 

 ホルベルグ組曲は弦楽主体の小編成な曲。古き佳きバロック風の音楽で温かさにも溢れていた。金管がないので何だかマリインスキーを聴いている感じではなかったが、弦楽が随分と奇麗にひびくので少し驚いた。つづいてブラームス交響曲第2番。わたしはこの曲を聴くのを最も楽しみにしていたのだが、演奏を堪能することは出来なかった。前半の二楽章は特にそうだったが、全体的にテンポが遅く間延びしていたと思う。フレーズや楽員の技巧に感激することは多々あったので少し残念。それでも第三楽章の中間部くらいから持ち直し、最終楽章ではゲルギエフが随分と音楽をダイナミックに動かしていて好かった。

 

 荒々しく、時に麗しく、歌劇のように

 

 そしてベルリオーズの『幻想交響曲』。これがものすごい演奏で、仰け反って仕舞うくらい感動した。涙するということも勿論のこと、その音楽の圧倒的な迫力に呆れてものが言えない感覚をいく度となく味わった。こういう感覚を抱くことはコンサートでも稀な経験である。嘘偽りなく、三日経った今でも音楽の余韻が脳の奥で木霊しつづけている。『幻想交響曲』の第二楽章では、舞踏会の様子をイメージした音楽が流れて来る。これをマリインスキー歌劇場で活動しているオーケストラが演奏すると、薫りと云うかムードのようなものがたしかに感じられる。「弾頭台への行進」の最後のような音楽が飽和するところでは、恰もオペラを体験しているような歓喜を思い知った。

 

 

 アンコールで聴かせてくれたのは、ベルリオーズのラコッツィ行進曲。とてもワクワクする元気な音楽で流石に『幻想交響曲』よりは軽めなので、良い感じで気分転換することができた。ブラームスは少しだけ心残りだったが、終わってみれば本当に素晴らしいコンサートだった。寒い夜の帰り道、心ふるえた侭だったからか寒さを感じることをなかった。

    

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