様式と転成

Words without thoughts never to heaven go.

ハイティンク指揮ロンドン響:ブルックナー交響曲第9番@みなとみらいホール

 

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 「愛する神に捧ぐ-Dem Lieben Gott」 

 

 ハイティンクロンドン交響楽団による神々しい演奏を聴いてわたしはただ陶然とする外なかった。圧倒的なものを「神」として表現する俗語的用法がわが国には有るが、ブルックナーの第九交響曲はそれを神と呼んではならぬように思われる。なぜなら、この楽曲は神そのものというよりも寧ろ、神あるいは神的な何かへと近づいてゆくその営みの貴さを表現しているようにわたしには感じられるからだ。

 

 

 ブルックナーが第九を書くことを通して求めていたこと、そしてそれを再生芸術として今日の午後に横浜でひびき渡らせてくれたハイティンクとロンドン響の創る音楽の志向していたこと、それは偏にこのアリサの台詞に集約されているように感じる。

 

 讃美歌として、神へ唄ふ。

 

 神性への漸次的な進歩にブルックナーの第九の本質があるのだとすれば、それを聴いてその美しさを神の唄と言い表すのは正しくない。この交響曲は、人が有らん限りの力で以て神へ唄うことを意図しているのではなかろうか。だからこそ、ブルックナーは「Dem Lieben Gott」という言葉をこのシンフォニーに献じたのであろう。そのような動きあるいは訴えが、ハイティンクとロンドン響の音楽には溢れていた。それは聴衆に対してひびきわたるのみならず、聴衆に天翔けんとする荘厳な後姿を見せつづける。人間の持ち得る精神の一つの態度として、あれほど荘重「Feierlich」なものをわたしは未だ一つとして外に知らないのである。

 

 

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