Project KALAVINKA

日常に眠っている「美」を千切り取ってゆく

ヤノフスキ指揮N響:ブルックナー交響曲第5番@NHKホール

 

http://www.flickr.com/photos/36984595@N00/1600102401

photo by Anna1975

 

 陽光の渡る四月の日曜日、葉桜が飾る河川敷で華やぐ人びと。そうした暖かな空気を感じつつ、私は随分と様相の異なる楽曲を聴きに来た。…と書き出すと何やらのどかな印象を与えるかも知れないが、それは実際とはかけ離れている。私はコンサートの開演時刻を勘違いしていたのである。午後になって確認がてらホームページに行ったら、愕然とした。大慌てで電車に乗り、駅に着いたのは開演15分前を切っていた。当日券を選び、座席に着き、思わずホつとしたのだった。

 

  

 ドイツの伝統とは何か

 

 ヤノフスキの指揮を最後に聴いたのはNHK音楽祭の時で、ベルリン放送響を率いたベートーヴェンはとても堅く古い響いていたのを今も覚えている。その指揮者がブルックナーを指揮したらどのような音楽になるのか、楽しみにしていたのである。しかしながら、結果的に言うと、悦楽に浸かるような境地には少しも至らなかった。席が褒められるような位置でなかったことを差し引いても、終演後に感謝感激して拍手喝采という気分にはならなかった。ここまで嘆息を漏らしたくなるような心地でホールを後にするのもひさしぶりだった。

 

 

 緩徐楽章とか最終楽章のコーダとか、楽曲として素晴らしいと思うところでは幾らか心が動かなくもないが、それにしても恐ろしいくらい集中できなかった。オーケストラの紡ぐ音の海に溺れるようなロマンチツクな体験は夢のまた夢だった。敢えて言えば、壮大豪華な船舶が航行する様を港から遠く離れた高台から眺めるような心地だった。感想と言う程の何を書くことも、これ以上は出来ない。あア、次の公演のうつくしく光ることをひそかに希望する。

 

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