様式と転成

Words without thoughts never to heaven go.

「新印象派―光と色のドラマ」展@東京都美術館

 

http://www.flickr.com/photos/121348673@N07/22788532455

photo by Di_Chap

 

 3月に入ったとはいえ、まだ肌寒い日が続いている。休日に美術館に行ったら込んでいるだけで何も愉しくない。こういうときは閉館時間に合わせるのがいい。わたしの場合、一つの展示を鑑賞するのに大体45分くらいあれば十分なので、夕方上野駅に向かった。着いたときにはもう16時半を越えていたが、館内は空いていて鑑賞はスムーズ。美術展そのものは構成がすばらしく、心地好いひと時を過ごすことができた。

  

     

 新印象派の美学

 

 スーラやシニャックで有名な画派で、筆法が特徴的で興味深い。色調は総じて華やかなものが多く、空や川や海など水の表現がとても奇麗。モネやピサロを擁したプロローグから第1章「1886年印象派の誕生」に移ると、スーラやシニャックの絵から印象派的な暈けた輪郭や空模様がなくなったのを確認できる。84年と85年を境にして空の筆致がガラリと変わっているのが印象的だった。

 

 

 第4章「1887-1891年:新印象派の広がり」以降が素晴らしかった。レオ・ゴーソンの『ラニー=シュル=マルヌの川と橋』、シニャックの『サン=トロペの松林』など透明感のある明るく軽やかな色合いがうつくしかった。新印象派はやはり何かと技法的に語られるものだが、わたしはそれ以上に新印象派の絵画が持つ根本的な明るさに最も感動する。それも煌々たる明るさではなく、程良く脱力した穏やかで優しい光りにあふれる画面の前でわたしは暫し時を忘れた。

 

 展示による転調

 

 そして第5章「1895-1905年:色彩の解放」が白眉だった。濃紺の壁に色彩感あふれる作品が並んでいて、一層華やかな印象を与える。アンリ=エドモン・クロスの『マントンの眺め』は恐らくこの展覧会で最も華麗な絵画だと思う。フォーヴィズムの胎動さえ感じさせる鮮やかさと新印象派の優しさとのマリアージュが絶妙だった。シニャックの『マルセイユ、釣舟』または『サン=ジャン要塞』も近しい傾向を持っているが、波一枚ずつの描き方がセザンヌのように造形的で面白い。

 

f:id:storehund:20150315064209j:plain

 

 いやはや、本当に全体として素晴らしい美術展だった。新印象派というと、何だか時流に乗ったというかいささか安っぽさも漂うところだが、作品配置のバランスや章立てによる構成、開催時期も含め周到に練られており、サブタイトルの「光と色のドラマ」を堪能させて貰った。絵画っていいなと心底思って帰路につく、あア春が待ち遠しい。

 

Remove all ads