Project KALAVINKA

日常に眠っている「美」を千切り取ってゆく

「最後の印象派」展@損保ジャパン日本興亜美術館

 

http://www.flickr.com/photos/56586021@N02/8600055878

photo by Adrian Hu

 

 九月、芸術の秋。モネやブルガリで賑わう上野は正に芸術祭の様相を呈してさえいる。栄えある美術展に彩られた各地のギャラリーの内、西新宿ではどちらかと言えば少々薄暗いイメージの絵画を並べていた。フォービズムやキュビスムなどメインの潮流から洩れた画家にスポットライトを向けているためか、平日であったことを差し引いても場内は矢張り閑散としていた。わたしも、とある画家に関心がなければ恐らく来ることもなかっただろうと思う。

 

Suite bergamasque: III. Clair de Lune

Suite bergamasque: III. Clair de Lune

 

 フランス絵画とノスタルジー

 

 かつて軽井沢に、メルシャン美術館という小粋なアートスポットがあった。そこでアンリ・ル・シダネルの絵画に魅せられたときのことはいまでもよく憶えている。仄かなひかりの具合が絶妙で、その幻想的な風景画の前で盛んに立ち止まって感激していた。あのときの思いを胸に今回の展示を巡ったので、失礼な話だがほかの画家のものは殆どスルーしてしまった。体調が芳しくないというのもあったが、恐らく20分も経たない内に展示コーナーを後にした。けれども、あれだけでも本当に、否、あれだけだからこそ、静かな感動がいまも続いている。

 

 

 彼の大判の絵画の一つに『コンコルド広場』というものがある。それこそメルシャン美術館で観たときにはそのサイズ感に圧倒された思い出があったのだが、今回の美術展で改めてこの作品に対峙してみると、あれ?と違和感を抱くほど普通の大きさに感じた。幼少期を過ごした公園に大人になってから再び訪れると、その遊具の大きさに違和感を持つのに近い感覚に陥ったのである。とは言え、メルシャン美術館にてシダネルの回顧展が開かれたのはデータによれば2011年の秋、この4年でわたしも成長したということだろうか。

 

 芸術は長く人生は短し

 

 そもそもメルシャン美術館は、あのシダネルの展示会を最後に閉館となってしまった。それに今回の展示会場も2014年の9月に損保ジャパン東郷青児美術館という旧名称から現在の名称に変わっている。損保ジャパンと日本興亜損保の二社が合併したことが背景だが、メルシャンも同様に閉館の前年にはすでにキリンの傘下に収まっている。経営統合と栄枯盛衰のサイクルは忙しないほどに短い。これからの未来を予測することなど不可能に近い。それでもまたいつかある日、アンリ・ル・シダネルの『コンコルド広場』を観にどこかの美術館に赴くことができればと秘かに願っている。

 

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